約 1,746,061 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/836.html
「ちょ……ちょっと! どいて! どいてってば!」 人垣を掻き分け、聞きなれた声が聞こえる。 押し合い、圧し合い、集まった人達の好奇の目に晒された中庭で、対峙している二人。 彼をよく知る者は、一様に彼の表情に驚く。彼――ギーシュ・ド・グラモンに、あんな顔ができたのか、と。 そしてもう一人を、観客は火を近づけられた火薬樽のように感じただろう。 ――ルイズの、使い魔だ。 ――また何か、問題を起こしたんだろう。 厄介者を見るような視線を、事情を知らぬ者達は注いでいる。 その渦中に、彼の主がもみくちゃにされながら、駆けつけた。 「ちょっとあんた! 何してるのよ! すぐに止めなさい!」 ルイズがジャイロの腕を掴む。そして強引にギーシュの前から引き離そうとしたが。 か弱い少女の腕力では、彼は、微動だにしない。 「ちょ、ちょっと! 言うこと聞きなさいってば!」 両手で引っ張る。それでも、動くことは無かった。まるで、彼の両足が地面に突き刺さっているかのように。 「下がりなさい……下がって! サイト! あんたも! 二人とも下がりなさい!」 少し距離があって。そこに、才人がいる。しかし彼も――その場から、動かなかった。 「どいてろ。お嬢ちゃん」 静かに、だが威圧のある声で。ジャイロは、ルイズに言う。 「そのとおりだ。君は下がりたまえ。……ミス・ヴァリエール」 ギーシュが、ジャイロの意見を後押しする。 「ギーシュ!? ちょっとあんた! 一体どういうつもりよ!」 「見てのとおりさ。……『決闘』だよ」 「……本気で言ってるの!? ギーシュ、『決闘』は禁止されているはずよ!」 ルイズがギーシュを睨む。正論は、ルイズにあったが。ギーシュは軽く、首を振ってそれを否定した。 「『決闘』の取り決めなら破っていない……。彼は平民だからね。……貴族同士の『決闘』だけだ……禁止されているのは」 君も知っているはずだが。とギーシュはルイズに言う。 「彼は私の使い魔よ! それはつまり、私と貴方が『決闘』することになるわ!」 その答えにもまた、ギーシュは首を振った。 「それは違う……。これは君には何ら関わりの無いことだ。……僕と彼、お互いに『納得』している……。『納得』済みの、『決闘』なんだ」 わかるかい? と彼は問うが。 「……わからない。あんたが何言ってるのか全然わかんないわよ!」 ルイズには一欠けらも理解できない。ギーシュが言うことも。『納得』の意味も。 「……いい加減にしよーぜ。おチビにいくら説明したって、納得してくれそうにねーからよ」 ジャイロが先を促す。それは、彼女を侮辱するために言った言葉ではない。 「そのとおりだ。……ここから先は『男の世界』……所詮、女には理解できない『価値観』の、世界だ」 ジャイロが前に踏み出す。 「だ、駄目よ! あんたは平民でしょ!? 貴族に、メイジに! か、勝てるわけないじゃない! 殺されに行くようなものよ!」 さっきよりも強く、ルイズがジャイロの腕を掴んで引っ張る。……だが、彼の歩みは止まらない。 「駄目! 駄目だったら!」 「……もう、止まれねーだろ、ここまで来たらよォ。お互い、後戻りなんてできやしねーんだ」 「そんなことない! そんなの決まってないでしょ!」 「……わかんねーか? ルイズ」 彼が初めて、少女を名前で呼ぶ。 「……え?」 それに、彼女は驚いた。耳を疑った。だからつい、彼の――腕を掴んでいた、力が緩んだ。 ルイズの手を振り切り、ジャイロが前に進む。 その正面にいたギーシュが、再び、手にした花を彼に向けた。 もう、後戻りは、できない。すればそれは、自身の名誉を傷つける。 ――『決闘』の舞台は、整った。 「……なによ。……なに言っているのよ! わかんないわよ! わかるわけないじゃないの! バカぁっ!」 その顔は悲痛に、上げた声は不安げに、彼に届いた。 「『公正』になる話をしよう」 ギーシュがジャイロに向かって、そう切り出した。 「僕の魔法は――、『土の系統』の魔法という。物質を操ることを得意とし、その中でも僕は『錬金』という魔法を得意とする。特に、『青銅』を練成することに、自信がある」 故にその二つ名も『青銅』だと、ギーシュは言った。 「ほんの九体」 そう言って、ギーシュは手にした花を振る。九枚の花びらが舞い落ち、地面につくと同時に。甲冑を身にまとった人型の何かとなる。 石礫――ゴーレムだ、と誰かが言った。 「――今現在、僕は九体のゴーレムを同時に使役できる。名前も決まっている。――ワルキューレ、という」 その名はジャイロも知っている。だが、ジャイロが知るその名は――戦場で、死ぬべき者を選ぶ女神の名だ。 今目の前に立っているのは――戦乙女などという華奢なものではない。そのフォルムは女性らしさなど無く、むしろ男性に近いものだった。 アマゾネス――屈強な女戦士と、形容するにふさわしい、その姿。 ワルキューレの姿を見るものは少なかったが――、幾人か、その姿を知る者がいた。 ギーシュの後方で、彼の豹変を信じられずにいた――モンモランシーも、その一人である。 彼の使役するゴーレムまで、変わりすぎていることに、彼女は愕然とした。 「今から君は――。この九体のワルキューレを相手にしなければならない」 それは、あまりにも無謀な挑戦であろう。ジャイロは両手両足とも鎖に繋がれ――満足に動けずにいる。 さらに、今の彼には――、切り札となるべき、鉄球が無い。 あまりにありすぎる戦力差だったが。 ジャイロはそれに、ニョホ、と笑う。 「ほォ――。そいつぁつまり、そのガラクタ九つぶっ壊しゃ、おメーをぶん殴れるってことでいいんだな」 あくまでも余裕ありげに、ジャイロは応える。 「……確かに。僕は今現在、九体以上ワルキューレを出せない。全て破壊されれば、僕は防御の手段を失う。しかし――、それが、できると?」 ギーシュの口調はあくまで静かに――だが不快を顕にして、ジャイロに問う。 「できなきゃ言わねーっつーの」 挑発めいた笑いで、ジャイロは返す。 その答えに、ギーシュは花びらを放る。 地面に着くと同時に。それは一本の長剣に変わる。 さらにギーシュが自身の使い魔の名前を呼んだ。 土が盛り上がり、出てきたものが、口にくわえていたものを、ギーシュは取り上げる。 そしてそれも、ジャイロに向かって、放り投げた。 「それは君のものだろう」 「……あぁ。そーだ。ねーと思って探してたんだが……オメーが持ってたのかよ。……まぁ返してくれて、感謝しとくぜ」 足元まで転がってきた鉄球をジャイロは取ろうとしたとき、ギーシュから問われた。 「その鉄球か。剣か。……どちらかを取った瞬間を、『決闘』の合図とする。……それでいいか?」 彼の指が、鉄球に触る直前で停まる。 だが彼にとって、戦いの口火を切るなど、躊躇する理由にもならないのは明白だった。 「別に構わねーぜ。そしてオレは当然! 鉄球を取るがね!」 ジャイロが鉄球を取り、回転をかける。風が唸りをあげ、彼の掌には旋風が巻き起こる。 その回転を、自分の胸に押し当てると、がきん、と音がして、拘束していた鎖の繋ぎ目が、壊れた。 それと同時に、ギーシュの腕が振るわれる。 九つの矢と化した敵が、彼めがけて――引き裂かんばかりに襲い掛かってくる。 その一番先にいた相手に――渾身の力で、ジャイロは、鉄球を投げたのだった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1743.html
「なあ、ルイズよぉ」 セッコは自分の首についた鎖を弄り回しながら呟いた。 その首輪についたプレートに、彼には読めない文字が刻んである。 “狂暴につき注意” 「オレ、アルビオンであれだけ頑張ったのにさ、何で前より待遇落ちてるんだよ。おかしくね?」 ルイズが大きな溜め息をひとつ吐く。 「あんたねえ、自分の胸に聞いてみなさいよ!」 事は2日前に遡る。 ワルドの裏切りにあい、ほうほうの体でアルビオンから脱出したルイズたちは、 アルビオン動乱の影響で厳戒態勢のトリステイン王宮へと事の報告に向かったのであった。 その過程で王宮の門の“内側”に着地したため、王宮の警備をしている魔法衛士隊に不審者として捕縛されてしまったのだ。 不審者と思われる事自体はある程度予想できていたのだが、その後がいけなかった。 いきなり見知らぬ男に襲われたと勘違いした寝起きのセッコが、ルイズたちが止めるまもなく暴れだしたのである。 偶然近くに居たアンリエッタ姫とマザリーニ枢機卿がルイズに気づいた為、 大事には至らなかったが、もう少しでルイズたちは反逆者にされかけたのである。 その上密命の成功報酬は、セッコが破壊した壁の修理費と、 取り押さえようとして怪我をした魔法衛士隊員の治療費に充てられ全て消えた。 ルイズの怒り推して知るべし。 「うーん、なんか悪い事したかなあ。思いつかねえ。」 「しまくりよ馬鹿犬!さあ、次の授業が始まるから行くわよ!」 ルイズは鎖の端を掴み、思い切り引っ張った。 「おい、待て、首が…プげッ」 その頃、元ニューカッスル城であるところの瓦礫を踏み締め、片腕のない長身の貴族が戦跡を検分していた。 ワルドである。 「ううむ、この辺りだったと思うのだが……」 その時、何者かがワルドの肩を叩いた。 同時に快活な、澄んだ声がする。 「子爵!ワルド君!ウェールズの遺体は見つかったかね?」 ワルドは首を振って、現れた男に応えた。 その男は、年のころ三十台の半ば。 丸帽子を被り、緑色のローブとマントを身に着けている。 外見は聖職者のようだが、発する雰囲気は軍人や権力者のそれだ。 帽子の裾からはカールした金髪が覗いている。 「この近辺だとは思うのですが、少々お待ちを。 それと、手紙の件本当に申し訳ない、私のミスです。何なりと罰をお与えください」 そう言って頭を垂れたワルドを、男はにかっと笑みを浮かべ制する。 「何を言うか子爵!君は敵軍の勇将を一人で討ち取る、目覚しい働きをしたのだぞ!」 「ですがクロムウェル閣下……」 「正直なところ、手紙の何倍もウェールズの“遺体”のほうが重要なのだよ。だから気にするな」 ワルドは自分の上官がやけに遺体を強調することに少し疑問を感じたが、 とりあえずそれは追いやり感謝の意を示した。 「ありがとうございます、閣下」 「うむ。ところでワルド君、きみが仲間に引き込んだという“土くれ”のフーケ。 いや、ミス・サウスゴータか。彼女はどうしたのかね? 聞けばアルビオン王党派は仇だというではないか。死体検分には来ていないのか?」 ワルドは返答に窮してしまった。 フーケはラ・ロシェールでの戦闘以来、いくつか設定しておいた合流地点にも現れず行方をくらましている。 戦死の可能性がゼロとまではいわないが、かの“土くれ”があの程度で死ぬようなタマとは思えない。 完全に従わせることができなかったと考える方が自然だろう。 「はっはっは、振られたかね。 どうせ用心深いワルド君のことだ、内情までは話してないのだろう? 盗賊の一人や二人どこに行こうと余は気にせぬよ。」 クロムウェルは快活な笑い声をあげた。ワルドの胸がちくりと痛む。 「重ね重ね申し訳ありませぬ閣下……もとい、アルビオン皇帝クロムウェル様」 「今必要なのは“結束”と“権威”だ。まだ両方が足りぬ。 しかし、いずれはハルケギニアを纏め、“聖地”を忌まわしきエルフどもから取り戻してみせる! 始祖ブリミルに余が授かったこの“虚無”をもってしてな! ……さて、ワルド君。ウェールズを捜そうではないか」 そう言うと、クロムウェルは自ら周囲の瓦礫を調べ始めた。 ワルドが慌ててそれに続く。 照りつける太陽の下、辺りには腐臭が漂っている。 それは戦死者の物言わぬ抵抗とも取れた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1264.html
早朝。朝靄が立ち込める中、馬に鞍をつけている三つの人影があった。すなわち、ルイズ、ポルナレフ、そしてギーシュである。 「…結局見つかったんだな。」 ポルナレフが嫌そうな顔でギーシュに話しかけた。 「違うな。」 ギーシュが作業をとめ、チッチッとキザっぽく人差し指を振った。 「自分から志願したんだ。女の子が危険な任務を任されたんだ。黙って見てるわけにはいかないだろう?」 ポルナレフは舌打ちした。折角の金づるが…と思っているに違いない。 「ところでお願いがあるんだが…」 「何よ。」 「僕の使い魔も連れていきたいんだ。」 「あんたの使い魔ぁ?…別にいいけどどこにいるのよ?」 「ここさ。」 ギーシュが下を指差すと地面が盛り上がり、巨大なモグラが現れた。 「ヴェルダンデ!ああ、僕の可愛いヴェルダンデ!」 ギーシュが地面から出て来たそれに抱き着いた。 「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」 ルイズが驚いて聞いた。 「ああ。このつぶらな瞳が可愛いらしいだろ?」 ベタ褒めである。親バカというか何と言うか… 「なるほど、別にいいかもしれんな…モグラならスピードは馬ぐらい出るだろう。」 ポルナレフの言葉にギーシュは頷いた。だが、 「私達、これからアルビオンに行くのよ。地面を掘って進む生き物を連れていくなんて、駄目よ。」 ルイズはギーシュの案に反対した。 「アルビオン?昨日も言っていたが本当にあそこに行くのか?」 「そうよ。そういう訳だから、残念だけどモグラなんて連れていけないわ。」 「そんな…お別れなんて辛い、辛過ぎるよ……、ヴェルダンデ…」 ギーシュは再び抱擁しようとしたが、そのヴェルダンデはギーシュの抱擁から逃れるとクンクン嗅ぎながらルイズに近寄って行き、押し倒した。そしてそのまま体を弄びだした。 「ちょ、何すんの!このモグラ!」 ルイズは必死になって抵抗したが、相手は小熊程あるジャイアントモール。このSSではあくまでただの少女の肉体であり、現実は非情である。 「いやぁ、巨大モグラと戯れる美少女っていうのもある意味官能的だね。」 「手篭めにしてるのはお前の使い魔だがな。」 ポルナレフは鞍を取り付けながらギーシュにツッコミを入れた。 「こら、離しなさい…!姫様から貰った指輪から…!!」 ヴェルダンデはルイズがしていた指輪に鼻を近付けていた。 「なるほど指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね。ヴェルダンデは貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけて来てくれるんだ。『土』系統の僕にはこの上ない素敵な協力者さ。」 ギーシュが自慢するように言ったその時、突如突風が吹きヴェルダンデが吹っ飛ばされた。 「誰だ!」 ギーシュが愛する使い魔を吹っ飛ばされたのに怒って杖を取り出した。 ポルナレフはギーシュと対称的にまず冷静にルイズが無傷であるのを確認した。ルイズが無傷ということは敵ではなく増援か何かだろうと考え、ゆっくりと風のした方を見た。 靄の中から羽根帽子を被った長身の男が現れた。容姿から昨日、ルイズが見とれていた貴族であることが分かった。 その貴族は一礼してから名乗った。 「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行することを命じられてね。君達だけではやはり心許ないらしい。しかし、お忍びの任務である故、一部隊を付ける訳にもいかぬ。そこで僕が指名されたって訳だ。」 帽子をとった男はルイズより外見からして10歳は年上だろうとポルナレフは推測した。もっとも、ルイズの外見も考慮すると更に5歳ほど加算出来そうだが。 「僕は女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。すまない……婚約者がモグラに襲われているのを見てみぬ振りは出来なくてね…」 「婚約者…?」 ギーシュが信じられない様子で呟いた。 ポルナレフも自分の予想を少し越えていて驚いたものの、中世の貴族社会ならこの程度の年齢差のある婚約も有り得るか、と思い納得した。 しかしワルドがばれないように股間を押さえているのを見て、やっぱりただの変態か、と思い直した。 ワルドは信じられないといった面持ちでいるルイズに駆け寄ると抱き上げた。股間はもう大丈夫らしい。 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!相変わらず軽いな、君は!まるで羽根のようだね!」 「お久しぶりでございます。……恥ずかしいですわ」 ワルドに笑いかけられ、ルイズは頬を赤く染めた。 「おでれーたなあ、相棒。まさかあの娘っ子にあんな婚約者がいたなんてなあ!」 鞘から少しだけ刀身を覗かせていたデルフがポルナレフに話しかけた。 「ああ。あの若さで魔法衛士隊…多分メイジだけで構成された親衛隊か何かと思うが…その隊長で子爵だとはな。確かルイズは公爵家の三女…家柄だけを考えたら婚約者として相応しいかもしれんな。」 ポルナレフがそう言って頷く。 「君、何納得してるんだい!?魔法衛士隊は僕たちメイジの憧れなのだよ!その隊長と『ゼロ』が婚約者だなんて…」 ギーシュが喚いた。 「誰も魔力や性格について相応しいとは言って」 ポルナレフがここまで言ったとき、二人がいた位置に巨大なクレーターが出来た。 「…彼等は何なんだい?」 ワルドがクレーターの底で倒れている二人を指差した。 「あの金髪がギーシュ・ド・グラモンで」 「グラモン…ひょっとしてあのグラモン元帥の御子息かい?」 「はい。であっちの眼帯をしているのが…その……私の使い魔…ですわ。」 ルイズが恥ずかしそうに言った。 「あれが君の使い魔かい?人だとは思わなかったな」 ワルドの言葉にデルフはちょっとムカッとした。 「おいおい、人の相棒を悪く言うなよ。」 いきなり咎められて驚いたワルドは辺りを見回した。 「今の声は…?」 「あ、あの……私の使い魔の…剣です」 ルイズが怖ず怖ずとポルナレフの近くに落ちている剣を指差した。 「ひょっとしてインテリジェンスソードかい!?これはまた驚いたな。君の使い魔はまた変な武器を使うんだね!ところで彼と彼の剣は何て言うんだい?」 「使い魔はポルナレフで、剣はデルフリンガーです。」 「そうか、デルフリンガー君か。いやいや、持ち主の名誉のために抗議するなんて泣かせてくれるね。」 ワルドが芝居がかった口調でそう言うと、デルフはケッと言い捨ててから喋ろうとしなくなった。 「おいおい、僕は別に君や使い魔君を馬鹿にしたつもりは」 「子爵、早く二人を起こして出発しましょう。こうしてる間にもレコン・キスタは…」 「おっとそうだったね。」 ルイズに急かされたワルドはクレーターの底で倒れていた二人をたたき起こすと、口笛をふいて使い魔のグリフォンを呼び出した。その背中にひらりと跨がるとルイズに手招きした。 「ルイズ、おいで。」 ルイズはもじもじ恥ずかしそうにしていたが、ひょいと抱き上げられ、一緒にグリフォンに跨がった。 「では諸君!出撃だ!」 ワルドがそう勇ましく言ったが、ルイズから死角となっていたその顔はだらし無くニヤついており、ポルナレフ、ギーシュ、デルフの三者は「こいつ、本当に魔法衛士隊隊長なんだろうか」と不安にならずにはいられなかった。 ともあれ、四人はラ・ロシェールを目指して学院を出発した。 「まったく…魔法衛士隊の連中は化け物か?」 とある駅で馬を交換している時、ギーシュがポルナレフに話しかけた。 「まったくだ。半日近くもノンストップで駆けさせるとは…」 学院を出発してから既に半日が経過しており、二人共息を荒げていた。 「二人に先に行っててもらうよう言おうか?」 ポルナレフはギーシュにそう提案したが、 「馬鹿もほどほどにしたまえ。今アルビオンが窮地に立たされていることぐらい知ってるだろう?だから一分たりとも時間が惜しいのだよ。」 ギーシュはポルナレフの提案に反対した。 「確かにな…だが、俺達の体力も限界だ。」 「そうなんだよなあ。勘弁してもらいたいよ。まったく。」 ポルナレフは少し考えてから再度提案した。 「なら俺達もグリフォンに乗せてもらうことにしよう。」 「そんなの出来る訳無いだろう?君は本当に頭脳がマヌケだな。」 「それが出来るんだな。もっとも、誰にも言いたくは無かったんだが…」 ごそごそとポルナレフは鞄の中を探してあるものを取り出した。ギーシュはそれを見て目を丸くした。 「それは…?」 「これが俺達もグリフォンに乗ることを可能にしてくれる。ただ、他の奴らには言うな。いいな?」 「おーい、ルイズ。グラモン元帥の御子息と使い魔君は何処に行ったのか知らないかい?馬を交換するって言ってから全然見当たらないんだが…」 「彼等なら先に行くとか言ってもう出発しましたよ。」 「ははは。なんだ、先に行ったのか。…ところでその亀はどうしたんだい?」 ワルドがルイズが持っている亀を指差した。 「この亀も私の使い魔ですわ、子爵。」 ルイズがそう言うとワルドは笑い出した。 「あっはっは!おもしろいことを言うな、ルイズは!でも冗談は休み休みにしたまえ。時期が時期だからね。」 「いえ、本当ですわ。この亀にも、ほら、この通りルーンが…」 ワルドが見ると確かに亀にもルーンが刻まれていた。なるほど、ルイズが言っているのも嘘じゃないらしい。 「…まあ、いいか。早くその亀を連れてお乗り。すぐに彼等に追い付けるだろう。」 ワルドはルイズを抱き上げてグリフォンに跨がると再び疾駆させた。 「驚いた!君はこんな所で暮らしていたのかい?ポルナレフ」 ギーシュが部屋中を見渡しながら言った。 「ああ。寝るときはそこのソファでな…」 ポルナレフは椅子に座りながらけだるそうに返答した。 二人は今亀の中にいる。馬は疲れるし、その内置いていかれるのは明白だからだ。 「この箱はなんだい?開けたらひんやりするんだが…」 「冷蔵庫。中にいろいろな物を冷やしておける物だ。」 「マジックアイテムかい?」 「違うな…。どういう仕組みか詳しくは知らんが魔法で動いてるのではない。電気で動いてる。」 「ほ、本当かい?」 異世界の文明に触れて驚きっぱなしのギーシュ。 その内、壁に掛けてある矢に気付いた。 「ポルナレフ、ここに飾ってある矢はなんだい?」 ギーシュがそれに魅せられたかのようにフラフラと近寄って行き手に取ろうとしたその時、 「それに触るな!」 ポルナレフが一喝し、ギーシュはびくっと動きを止めた。 「いかなる者もそれに触ってはならないんだ…。」 ポルナレフは椅子に座ったままギーシュを睨んだ。 「さ、触るぐらい構わないじゃないか…」 睨まれたギーシュは大人しく矢から離れた。 「それでいい…世界にそんな矢など…力など…要らないからな…」 ポルナレフはフッと溜め息をついた。 「あと、そこの棚の上の物も触れるな。矢とそれらはこの亀の持ち主の仲間の遺品だからな。」 「遺品…」 棚の上には大きなジッパー、ヘアピン、タマゴの殻みたいな帽子、ナイフ等が飾られてあった。 「…よければ聞かせてくれないか?」 「何をだ?」 「『持ち主』と『遺品』の話をさ。」 ギーシュは真剣に聞きたがった。だが、知りたがったのは『持ち主』や『遺品』ではない。 それはポルナレフが先程口走った『矢』と『力』のことであった。 ギーシュはグラモン家の末っ子として生まれたため、ルイズほどではないが、二人の兄にコンプレックスを抱き、実力で二人を越えたいと常日頃思っていた。 だが、ドットの彼に作れるのは青銅のゴーレム、ワルキューレのみ…まだ子供だからしょうがないのだがそれでもなお悔しかった。 だが、今さっき、何らかの『力』が矢にある、とポルナレフは仄めかした。ギーシュはそれが喉から手が出るほど欲しく思った。その『力』なら兄を、いやひょっとしたら父をも超えれるかもしれないと考えたからだ。 だが、ポルナレフの台詞からしてそのままじゃ明かしはしないだろうと考え、話を『持ち主』と『仲間』の話にすり替えた。 きっと『持ち主』やその『仲間』は『力』に関係している。なら、そいつらの話から推測すれば『力』の手に入れ方も明らかになるはずだ…と考えたのだが、 「だが断る」 「はい?」 「俺は最後ぐらいしか関わってなくてな。だからほとんど知らんのだ。話は聞いてはいるんだが、俺ごときが喋っていい物じゃあないしな。」 「そ、そんなあ…」 「それより先は長いぞ。少しでも寝て精力を蓄えろ。」 そう言って口惜しがるギーシュをよそにポルナレフはソファーの上で横になった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/960.html
「・・・。」 「う~ん・・・キュルケ・・・に・・・シアーハー・・・むにゃ・・・。」 「・・・。」 「壊れない・・・ウフフ・・・。必殺・・・やって・・・おしまい。」 「しばっ!!」 バサァッ!! 爽やかな朝に不穏な寝言を言うルイズ。 そんな彼女の朝は、キラークイーンに布団を引っぺがされることから始まった。 さすがに布団の爆破はしない。 『許可なき爆破は許さない。』キラークイーンに課せられたルールである。 どのみちルイズに馴染んできたキラークイーンにとっては、ルイズの意志がなければ出来ないが。 その他にも目覚ましの役目も言い渡されている。 そんな忠実なる使い魔に、彼女は寝ぼけ眼で言い放った。 「・・・誰?ってか何?」 「・・・。」 「あ、使い魔か・・・。」 ・・・何かもうダメだ。 「着替えなきゃ・・・。えっと、パンツは一番下に・・・と。」 衣擦れの音の響く部屋、その中で無駄に存在感を発揮するキラークイーン。 オプションには半裸の美少女。 異様な光景である。 「櫛は・・・キラークイーン、ちょっと取って。」 櫛を手渡すキラークイーン。何故かいつまでも視線をルイズの手に向けている。 「あんたって手を見ると動き止まるわよね・・・。変なの。」 その理由を彼女は知らない。 でも知らない方がいいってことも世の中にはたくさんありますよね。 「さて、準備も出来たし朝食に行くわよ。ついてきなさい。」 何となくキラークイーンには傍にいて欲しいルイズ。彼を近くに呼び寄せます。 別に離れても問題は無かったのだけれど、あんまり離れていると何かこうムズムズとするのです。 部屋から出て、施錠チェック終了!!といったところでなるべくなら聞きたくない声がした。 燃えるような髪。ルイズとは対照的な「何想像してんのさ」と聞こえてきそうな体。 そう、今朝、ルイズの夢の中で爆弾戦車に追っかけ回されていた女性、キュルケである。 ちなみに爆死する前に布団を引っぺがされたため、死んではいない。 「あら、ルイズ。その猫っぽい亜人が貴女の使い魔?けっこうキュートね。 フフッ・・・ひょっとして他の人のをさらってきたんじゃないでしょうね?」 「黙りなさい、キュルケ。体温すらない体にするわよ?あと人の使い魔、勝手に触らないで。」 「・・・。」 「・・・?フフ・・・私の手、綺麗でしょ?」 「キラークイーン!手なんか見ててもしょうがないでしょう!?行くわよ!」 「あら、キラークイーンっていうのね。素敵な名前・・・。 それと・・・私だけが知ってるのもフェアじゃないから。」 彼女の隣にジョーダンのようなトカゲが現れた。 「これが私の使い魔、フレイム。サラマンダーよ。しかも火竜山脈の・・・。 好事家に見せたらきっと欲に塗れた醜態を晒してくれるでしょうね・・・。」 「ふ~ん、まあまあね。あんたにぴったりじゃない。それじゃ、私お腹空いてるからこれで。」 「あ、ちょっと・・・。」 有無を言わさず立ち去るルイズ。 普段見せているコンプレックスの欠片も見せなかったルイズにキュルケは戸惑っていた。 意外に思えるかもしれないが、このときルイズが癇癪を起こさず、冷静に対応できたのは奇跡などではない。 なぜならキラークイーンもけっこうレアなため、この時点でルイズには勝った!!という考えが浮かんでいたのだ。 キラークイーンの能力を把握しているルイズにとって、サラマンダーなどシアーハートを発射するだけで事足りるのだから、 当然といえば当然の態度である。 本日のルイズ・・・夢の中で必殺技を思いつく。 必殺技・・・シアーハートアタックを発射後すぐにキラークイーンで全力投球。これにより周囲の温度に影響されずに標的に向かう。 ただし対象物に温度がない場合は使えない。 To Be Continued → 戻る 目次
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1800.html
教室の一角。マントを羽織った少年少女達の間に、大男が倒れていた。 気を失っているようだが、それでもその雰囲気にはなにか語るべくないものがあった。 「へ、へいみん?」 「そもそも人間?」 「ゴーレムとかじゃない・・・よな?」 「ざわ……ざわ……」 筋肉質であり、マントや宝石などの小奇麗なものはつけていないことから、貴族ではないことはわかる。 しかし、彼の頭には角。彼の両肩にも角。人間ではないのか、人間、あるいは亜人だとしても平和的な人間でない可能性が 非常に高そうだとメガネの少女は冷静に分析した。 「ゼロのルイズ!なにを呼び出したんだ!」 「何度も失敗して、成功したと思ったらこれかよ!」 「まともに使える魔法はないのか!」 教室から少女に向けて野次が飛ぶ。 桃色の髪の少女が叫ぶ。 「こ、コルベール先生、やっぱりこの大男とも『契約』しなければいけませんか?」 「ミス・ヴァリエール、例外はありませんよ。」 少女は少し唸った後、諦めたように気絶しているであろう大男に近づく。 「き、貴族にこんなことされるなんて……普通は一生ないんだからね!」と気絶している大男に話し掛ける。 そして、彼の顔に顔を近づけ、唇をあわせた。 左手の甲が光る。 「ROOOOAHHHHHHH!!」 それとほぼ同時に大男が叫び声と同時に目を覚ました。 (な、なんだこの痛みはァーーッ!このような痛みは……例えるなら、そう『波紋』ッ! それに…なぜ俺はこんなところにいるッ!?) 叫び声をあげた大男の迫力から、本能的に命の危険を感じて逃げるようにして 教室の出口へ向かうものが現れる。 「女ァーーッ!俺になにをしたーーッ!」 少女はその叫び声に怯み、数歩下がりつつ答えた。その前にさりげなく髪の薄い男性が立つ。 「つ、使い魔のルーンを刻んでいるのよ。すぐ終わるから、あ、安心しなさいよ…」 左手の甲の光が収まり、痛みが治まった大男は状況を確かめようとする。 (俺は、『エイジャの赤石』を賭けて、ピッツベルリナ山神殿遺跡で、古代ローマの戦車戦を行い… ジョセフと戦った末……奴に敗れて死んだはず…… しかし、無い筈の両腕!両足!胴体!全て元通りだ……どうなっているんだ?俺は死んだのではないのか? 死んだことに悔いはない。一人のジョセフを戦士に成長させ、その戦士に全力を持って戦い、 敗れて死んだということは誇りでもあるし、名誉でもある。 が、しかし……生きている……死ぬ前の走馬灯という奴でもなさそうだ……) 彼は少女に向き直って強く問い詰める。 「女、ここはどこだ……俺に何をした。」 「さ、さっき言った通りよ。あんたを私が『サモン・サーヴァント』で召還して使い魔の契約をしたの。 つまりあんたは私の使い魔。わかった?平民だからわからない?」 「『サモン・サーヴァント』だと?確か人間どもの言葉で『召使』だったか……俺に召使をやれと?」 「だからさっきから使い魔だって言ってるでしょ。主人である私の望むものを見つけてきたり、守ったりするのよ。 使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるはずなんだけど……まだ契約して時間が短いからかしら、 なにも見えないし聞こえないけど……そうそう、もちろん主人である私には絶対服従ね。」 「先ほど召還などといったか……よくわからんが何か普通の人間どもとは違う能力を持っているようだな? 死の淵に居た俺を五体満足までに回復させるのだからたいしたものだ。場所もどうやらピッツベルリナ山神殿遺跡でもなさそうだ……」 「あ、あんた?魔法も知らないの?どこのド田舎のド平民よ!?ピッツベルリナ山なんて聞いたことないわよ! だいたいあんた、人の話聞いてないでしょ!あんたは私の使い魔になるの!わかってるの?」 少女はルーンを結べたこともあって面食らいつつも少し強気に出ていた。 が、使い魔に素直になる気を微塵も感じられないためにただでさえ常日頃バカにされている少女は 焦り、いらついていた。 が、やはり大男の返答は少女の望むものではなかった。 「体のいい召使い兼ボディーガードなどをなぜ俺がしなければならない?俺が従うのは強者だけだ。断る。」 「は、はぁ?あんた、人の話わかってるの?大体強者って……平民だか亜人だかしらないけど、 仮にもここは魔法学校。これだけの貴族に囲まれて勝てると思ってるの?」 「そう思うなら……試してみるか?力づくでここを出ても構わなんしな。」 大男はなめ回すようにクラス見る。その迫力に短く声をあげるもの、後ろに倒れるものなどがいたが、各自同じようなものであった。 「……が、この部屋には俺の相手をできるような者はいないようだな……そこの男は見込みがありそうだが、生憎リングがないものでな。さ、どけ」 「だ、誰がどくっていうのよ!私がどくのは道にマリコルヌが落ちてるときだけよ!」 少女は数歩後ろに飛びのき、杖を向ける。 「ミス・ヴァリエール!貴女は下がっていなさい!」 男が叫び大男に杖を向ける。ぶつぶつと何事か唱えた後に杖の先から炎の玉が大男へ向かう! しかし彼は、片手だけで、その巨大な炎の玉を払いのけた。 まるで、ハエを払うかのように。 普通の相手であればかわすのも難しいタイミング、威力も普通の相手であれば手で払いのけることなど選択肢にすら 入らなかったであろう威力。まさに絶妙な攻撃であった。 惜しむらくは、放った相手が普通の相手ではなかったことだ。 「ここの人間どもは波紋の一族とは違う……なにか不思議な能力を持っているようだな……魔法学校などといっていたが… これらを『魔法』と呼んでいるのか?だが、威力も工夫も足りなかったな。貴様でこの程度ならば……たかが知れるな」 彼は致命傷どころか火傷すらしていない。 怯む様子もなく、彼は起き上がった。そして、光、前の世界であれば忌むべきものであった光の差す 窓の方向へ走り出し、その方向にいた先ほど攻撃してきた杖を持った男に蹴りを放とうとするッ! 起き上がった勢いによる攻撃と脱出を同時に行う。彼の戦闘のセンスは失われていなかった。 1対1ならば確実に仕留めていただろう。1対多でも彼の神経が研ぎ澄まされた、彼が言えば激昂するであろうが 油断していない状況であればその蹴りは入っていたであろう。しかし、彼はその男以外を敵としてみなしていなかった。 伏兵は男の後ろの少女だった。 少女が叫ぶ。 「コルベール先生……下がるなんてできません……敵に……敵に背中を向けないやつを貴族と呼ぶんです! 『ファイアー・ボール』!」 先ほどの少女が大男に杖を向け、なにかを飛ばす。 大男は先ほどと同じタイプの攻撃であると断定し、同じ対処を試みた。 片手をなにかが飛んでくる方向に出し少女を見据える。 「馬鹿の一つ覚えかッ!MOOOOOO!!」 片手でそれを払いのけようとした…が!それが腕に着弾した途端!爆発をおこしたッ! 彼女の唯一の『得意技』である爆発が大男を包む! 轟音が部屋を包む。教卓の上の備品が少々吹っ飛ぶ。教卓も吹っ飛ぶ。しかし、それでも大男は立っている…はずだった。 その大男の類まれなる身体能力をもってすれば、この程度の規模の爆発では驚きすらしなかっただろう。 しかし、大男は立てなかったッ!爆発による煙が舞っている中、彼はひざまずいていた。 その爆発は『普通』の爆発ではなかった。 (か、体が痺れるッ!う、動けんぞッ!幸い体は無事のようだが……これはまるで『波紋』ではないかッ……MOOOOOO……! しかし、この少女…波紋戦士には見えん……シーザーのシャボン玉のような攻撃のように攻撃してきたなにかに波紋を含めているなら、 俺の体の神経は破壊されるはずッ!しかし、動けないだけでそれはない……さらに、無意識下の波紋戦士でもしているはずの 波紋の呼吸をしていない。そして、なによりもッ!戦いについて場数を踏んでいる雰囲気、こういった命の危険に大して無防備すぎる…… つまり、この程度の能力を持った人間はこのあたりにはいくらでもいるということか? ということは、俺に適うだけの戦士がまだどこかにいるのではないだろうか? 我が柱の男たちの敵は波紋戦士たちだけだと思っていたが……少し…興味がでてきた…この魔法とやらに) 強者と戦いこそ全てである大男は心境の変化とともに立ち上がった。 そして、煙がはれたのち、少女は立ち上がった大男に話し掛けた。 「これで貴族と平民の格の違いがわかったでしょう!おとなしく使い魔になりなさい!」 「……いいだろう……少しの間、その使い魔とやらになってやろう……」 「少しの間って…ま、今のところはまあいいってことにしておいてあげる。 じゃあ、使い魔には名前が必要ね。あんた、名前ある?」 風の戦士が、二度目の二〇〇〇年ぶりの目覚めを果たした。 「俺の名はワムウ。風の戦士ワムウだ。」 風と虚無と使い魔 召還潮流
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2486.html
前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 ゼロのルイズの使い魔。広瀬康一のハルケギニアでの一日は、桶に水を汲んでくることから始まる。 水場で自分の顔を洗い、水を汲む。この水でルイズに顔を洗わせる。 次はルイズを制服に着替えさせるわけだが、最近ルイズは康一に手伝うように要求してこなくなった。 相変わらず背を向けて待つ康一から隠れるように、もぞもぞと着替える。何かの拍子に目が合うと、顔を赤くして怒る。 以前は裸になっても恥ずかしがらなかったのに、謎である。 朝食の頃合になると、康一はルイズからバスケットを受け取って外に出る。 最近は内容がかなり豪勢になっている気がする。 というか、ハルケギニアの朝食は総じて重いことが多いうえに、厨房のマルトー親父が「たくさん食べて大きくなれよ!」との愛をこめて、どんどん料理を豪勢にし、さらに肉をてんこ盛りにするので、康一はちょっとげんなりしてしまう。 質素でもいい、母さんが作ってくれた味噌汁が恋しい。 だから、食べきれない分は、最近仲良くなった他の使い魔たちに分けてあげることにしている。 先日タバサやキュルケを乗せていた青い竜(風竜というらしい)と偶然会った際に食べきれない肉をあげたら、他の使い魔たちもわらわらと寄ってくるようになったのだ。 最近の食事は、厨房の裏手にある使い魔たちのたまり場でとることも多い。 授業の時間は、康一もルイズに付き添って出席することにしている。 使い魔である康一は本来出てもしょうがないのだが、何気なく聞いているうちに面白くなってきたのだ。 本来は勉強が好きではなかったのだが、こちらの世界のことを少しでも知りたいという『必要性』が康一の意欲を支えていた。 「もう床はいいから、椅子に座りなさいよ!」 とルイズが言うので隣に座らせて貰っているが、他の生徒たちも何も言わない。 ただ、キュルケがタバサを連れてやってきて、康一をルイズと挟む形で座ってしまうので、キュルケに恋する男たちの視線が背中に突き刺さるのが最近の悩みの種である。 どうしても納まりきらない男が、康一に嫌味を言ってきたり、もっと直接的に侮辱してきたりすることもある。そういうときは、だいたいキュルケの合図で、フレイムがこんがりと焼いてくれる。 ただ、キュルケが居ないときに、一度数人の貴族に囲まれたことがあった。 「平民の癖に・・・」「ゼロの使い魔の分際で・・・」と詰る男たちの前に、かわりに立ちはだかってくれるものがいた。 あの決闘で因縁のあったギーシュである。 ギーシュは言った。 「ミスタ・コーイチは僕を相手に、立派に自らの実力を証明してみせた。その彼を平民と侮るなら、それは僕への侮辱と見なす!」 文句があるなら「青銅」のギーシュが相手になるぞ!そういってギーシュが見栄を切ると、男たちは鼻白んで退散していった。 所詮貴族相手に本気で対立するほどの覚悟はないのである。 康一が礼を言うと、ギーシュは照れくさそうに鼻を掻いた。 「君はこの『青銅』のギーシュに打ち勝った男だからね。その君が馬鹿にされるのが我慢できないだけさ。」 そして改めて、ルイズを皆の前で侮辱したことに謝罪した。 潔い謝りっぷりに「なんだ。以外といいやつじゃあないか。」とその謝罪を受け入れた康一は、ギーシュとそれから機会のあるごとに話す仲になった。 実は、あの鼻っ柱をへし折られた決闘の後、一気にカリスマ性を失ったギーシュを哀れに思ったモンモランシーが戻ってきてくれ、よりを戻したらしい。得なやつである。 そんな風にしてギーシュといろんな話をしていると、ギーシュの友人達とも自然と仲良くなっていった。 こうして、召喚されてから二週間もすると、康一の周りには常に人が集まるようになっていった。そして、康一の隣にはいつもルイズがいた。 それまでいつも一人だったルイズである。急にクラスメイトたちで賑やかになった学校生活に、最初ルイズは戸惑い気味だった。 しかし、みんなから好かれる康一と一緒にいると、わだかまりのあったクラスメイトたちとも自然と打ち解けることができた。 こうして一日を終え、二人揃ってルイズの部屋で寝る前には、ベッドのうえでいろいろな話をするようになった。 ルイズはハルケギニアのことを康一に教え、康一は杜王町のことをルイズに話した。 話が由花子さんの段になると、ルイズはしかめ面をして、疑わしそうな目で見た。 「あんた、前から時々恋人がいる、恋人がいるって言ってたけど、まさか本当なわけ?」 見栄張ってるんじゃないでしょうねー、と言わんばかりである。 「まさかって、まだぼくがうそついてるとか思ってたの~!?」 大仰に目をひん剥いてみせると、ルイズはなぜか目をそらした。 「・・・あんたの恋人ってどんな人?」 康一は目を閉じて、由花子さんの顔を脳裏に描いた。 すらっとした体型。整った鼻筋。きめの細かい肌。長く艶やかで、きらきらと光を放つ黒髪。そしてなによりも、あの強くまっすぐな瞳。 由花子の容姿を話して聞かせると、ルイズはどんどん不機嫌になっていった。 「男より頭ひとつ分大きい彼女なんて、似合わないわ。」 ルイズはそっぽを向いたまま、ネグリジェの裾をぎゅっと握り締めた。 「それをいうと、ぼくと付き合ってくれる女の人なんてほとんどいなくなっちゃうなぁ~。」 康一が笑うと、ルイズは口を尖らせた。 「別に・・・あんたより小さい女の子なんてそこら中にいるわよ。」 それだけ言って毛布に包まった。 「そうかなぁ~。」 康一は知り合いの女性たちの身長を思い出してみたが、自分より低い人は思いつかなかった。 こっちではタバサが自分より低いだろうが、あれは明らかに子どもだからノーカウントである。 でもルイズがこうやって毛布を被るのは、これで話を打ち切りにするという合図だと分かってきた康一も、そろそろ寝ることにした。 部屋の明かりを消す。 明日あたりオールド・オスマンに会いに行ってみようかな。 杜王町に帰る方法をそろそろ本格的に探してみよう。 そう心に決めて、目を閉じる。 静かになった部屋で、毛布から頭だけ出したルイズが、何か言いたげに見つめているような、そんな夢を見た。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/886.html
爆発の罰として教室を一人で片付けたルイズは昼食を取る為、食堂に居た (最初は全部ディアボロにやらせようとしたが、探しても見つからないので断念した 爆発で吹っ飛んだと気付いたのは掃除が終わった後だ) 隣にはディアボロが居る ある事の為に食堂に来る前に召喚しておいたのだ 「小娘、何だこれは」 「アンタの食事よ」 ディアボロの目の前にはパンにシチューが並んでいる まあ、人並みな食事といってよいだろう、周りに目を向けなければの話だが 周りには比べるのが愚かしくなる程、豪華な料理が所狭しと配されている この差にはあからさまな区別の意図が見て取れた そう、ルイズは食事に託けて、教室を一人で片付けさせられた憂さ晴らしを兼ねて上下関係を教育しようとしているのだ 「このアルヴィーズ食堂で食事出来るだけでも結構大変なことなのよ、他の使い魔たちは全部外で食べてるんだから 感謝しなさいよね、もしどうしてももう少しいいものが食べたいって言うんなら食べさせたあげないことも無いわよ 貴族の使い魔にふさわしい態度を取るって言うんならね、まず呼び方ね、小娘じゃなくって御主人様………」 ルイズの使い魔の在るべき態度についての演説が続く 一方、ディアボロはルイズの話を無視して食べ始めている (もちろん周りの料理にも手を出している) 唐突に隣から聞こえた何かがぶつかる様な音にルイズは振り向いた ディアボロが白目を剥いて泡を吹きながらテーブルに突っ伏している はて、何が起きたのだろうか? ルイズが疑問に思っていると厨房の方から一人のメイドが小走りに此方にやって来た 表情から察するにかなり焦っている様だ 「失礼致します、ミス・ヴァリエール」 「どうしたの?」 「ミス・ヴァリエールが此方に運ぶように仰られましたシチューなのですが、 あれは鼠退治用の毒餌でございまして…」 ああ、そういうことだったのかと納得の表情を浮かべる そして、笑みを浮かべながらメイドに皿を下げる様に告げ、こうも言う 「大丈夫よ、何も問題はないわ」 ■今回のボスの死因 殺鼠剤の入ったシチューを口にして中毒死
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/419.html
「召喚成功よ!」 そんな声が聞こえた。 何だ?DIOの手下か?…いや、それはもう終わったことだ。 なぜなら『声』が聞こえてきたからだ『終わったよ……』と だからDIOの手下がおれに襲い掛かってくるとは思えない。 コイツは別の何かだ。そう思っているといきなりキスされた。 「おいおいお嬢ちゃん、いくらおれがカッコイイからっていきなりは無しだぜ?」 そう言って見る。 どうせ人間にはおれが愛想を振りまいてるようにしか見えないんだ。 人間なんて何を言っても同じさ。 と思ったらおれにキスしてきた女は固まっている。 何だ?と思ったがその疑問は自分で解けた。 「あれ?おれ人間の言葉をしゃべってるぞ?」 と言うことは… 「何を言っているのよこのバカ犬~~~!」 やべえ、聞こえてた! その後何とかおれを追い掛け回した女(ルイズというらしい)をなだめたのはコルベールとか言うハゲだった。 よくやったハゲ。そう思ったが口には出さない。 「さすがはゼロのルイズね。使い魔の忠誠もゼロなのかしら?」 おお!ナイスバディなねーちゃん! 「うるさいわねキュルケ!」 そのナイスバディーなねーちゃんはキュルケというらしい。 あとで無垢なふりをしてじゃれて楽しもう。 その隣にいるのも体は貧相だが顔はいい。こっちも唾を付けておこう。 そんなことを考えているとヤバイ事に気がついた。 おれが顔をしかめているのに気がついたキュルケがルイズにそれを教える。 「使い魔の体調管理もできないの?」 「イキナリこんなことになるなんて思ってなかったのよ!」 「はいはい。ホラ、いってやりなさい」 「む~~~~~」 そういいながらこっちに来ておれに話しかけるルイズ。 「どうしたのよ?」 「屁がでそうだ……」 おれは自分の高尚な趣味のために周りを見回す。見つけた。 あの金の巻き髪のやつがいい。 そいつに向かって走り出す。そしてそいつの頭に飛びつき、髪をむしる。 それをしながら屁をこく。ああやっぱりコレは面白い。 おれはそいつの頭を離れた。 「けけけ、決闘だァーーーー!」 うん?何だ? 「何いってんだギーシュ!」 おれが屁をこいたヤツはギーシュというらしい。 「君に決闘を申し込む!」 いきなりだな…だが! 「いいぜ!」 「言ったな!出て来いワルキュー…」 相手がバラを掲げるアレがあいつの武器か?ザ・フールの砂で作った槍でそれを叩き落す。 そして間髪いれずに砂の拳で顔面をブン殴る! そいつは鼻血を吹きながら後ろに倒れた。痙攣しているし気絶したとみて間違いないだろう。 僅か三行で決着はついた。 「スレの楽しみ?知ったこっちゃないね」 そういって正に外道な勝利宣言をした。 To Be Continued… ギーシュ・ド・グラモン―その後医務室でケティとモンモランシーが鉢合わせ、二股発覚の末二人から平手打ちをくらう。
https://w.atwiki.jp/freedom_wars/pages/200.html
アブダクターの死骸・残骸に由来する残留資源。センサーの一種。 入手方法 ボランティア 第1情報位階権限 シ1-3号嚆矢作戦:市民奪還 第2情報位階権限 任意:シ2-5号作戦:目標排除 第3情報位階権限 ジ3-4号防波作戦:市民護衛 第4情報位階権限 取得考試 第4情報位階権限 任意:シ4-7号作戦:市民奪還 第5情報位階権限 シ5-3号寂光作戦:敵軍排除
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/673.html
煙の晴れた中庭を前にしてルイズは天に向かって祈りをささげた (我等が始祖にして偉大なるブリミル、私何か悪いことを致しましたでしょうか? 今まで生きてきた中で嘘をついたことはあります、隠し事をしたこともあります ですが魔法が使えぬゼロという嘲笑に耐え、懸命に努力してきたつもりです たしかに神聖で美しく強い使い魔というのは高望みし過ぎたかもしれません、自分でもそう思います でもこれはあんまりじゃないでしょうか) 何度かの失敗の後でやっと呼び出すことに成功した自分の使い魔に視線を移す 髪の色は自分と同じピンク‐でも斑模様、服装はほぼ半裸‐三十過ぎがする格好ではない 平民という時点で問題外、外見でも不合格を宣告するには十分、駄目押しなのはその態度だ 私を、可憐でひ弱な百合の花の様な貴族の美少女を見て、怯えているとはどういうことだ 平民が突然こんな所に来れば混乱するのは無理も無いが、これはありえない 結論:これは使えない 「ミスタ・コルベール、もう一度召喚の儀式をやらせて下さい」 「ミス・ヴァリエール、それはダメだ」 あっさりと却下される 人事だと思って…、薄いの髪の毛だけではないらしい 神聖な儀式だの、伝統だの、ルールは絶対だの、再召喚が行えるのは使い魔が死んだ時だけだの、 どうでもいいことをまくし立てた挙句の果てに、時間が押しているからさっさと契約を済ませろと来た まあ確かに何時までもこうしている訳にはいかない、極めて不本意ではあるが契約を行うことにする 決してU字禿の言葉に押された訳ではない 口の中で呪文を唱えた後、怯える男に口付けをした 唇が離れた後、左手を抱えて男はのた打ち回りながら倒れた 私の唇に触れたのだから感激して涙するのが筋だろうに失礼な奴だ 刻まれたルーンを興味深そうに見ていたU字禿や私を馬鹿にしていた同輩が室内に戻ってなお、男は倒れたままだった その様を見て一人残ったルイズは声を上げる 「ほら、いつまでも寝てないでさっさと起きなさいよ」 反応がない いぶかしみながら、爪先でつついてみる ピクリとも動かない 「えっ!」 口に手をかざしてみる 息がない 「あれっ!?」 首に手を当ててみる 脈がない 「これって、つまり」 ■今回のディアボロの死因 ×ルイズにキスされたショックで死亡 ○ルーンを刻まれたショックで死亡